12.04.2012


ある男性とその息子が車の大事故に遭ってしまいました。
男性はその場で即死。 
息子は近くの病院に運ばれ、緊急手術となりました。
担当医師は著名な脳外科医でこの分野の大権威。 
ところが手術室に入るやいなや、この外科医、こう言うのです。
「私には手術はできない。なぜならこの患者は私の子供だからだ。」


これ一体どういうことなのか、みなさんすぐに理解できましたか?



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はい、外科医は子供の母親だったのですね。

外科医というと一般の人が思い浮かぶのは男性。(私もそうです。)

しかもアメリカにいる人ならば、外科医といえば白人男性、もしくはアジア系男性を想像するのではないでしょうか。

医者、弁護士、科学者、といった職業は男性比率が高いので、これら職業に携わっている人=男性、と無意識のうちに我々の脳に刷り込まれています。

この「無意識下の刷り込み」が怖いのが、自分は女だし(男だし)、この仕事には向いていない、と思い込んでしまうこと。

また、その「思い込み」が自分自身に向けられるだけならまだしも、他人へ向けられると、知らず知らずのうちに差別につながることもあります。

有名な例として、とある科学系論文を 中身は一緒のまま、著者の名前を変えて 査読(レビュー)してもらうとどうなるか、実験した例があります。査読するのはその道の専門家。

すると、男女の専門家ともに、

 著者が男性の名前の論文

のほうが、

 著者が女性の名前の論文

よりも優れている、と評価したのです。

内容はまるっきり一緒なのに、です。
皮肉なことに、差別される側である女性が、仲間の女性を差別している、という現実。


ここアメリカではアファーマティブ・アクション (Affirmative Action)と呼ばれる、人種や性別で差別されやすい人(例えば黒人や女性)を優遇する措置が行われています。たとえば入学試験や就職にあたり、女性や黒人は最低でもこれだけ雇おう、と初めから決めていたりします。

このアファーマティブ・アクション、

「この人は実力はないのに、女性だから優遇されて仕事をもらったのだ。」

と、逆に差別を引き起こしたりもしていますが、私は基本的にこの方策に賛成です。
特に黒人の方の虐げられた歴史や現実を見ると、本当に切なくなります。

(ちなみにカリフォルニアでは、アジア系がトップの大学を占める割合が高いので、アジア人だと入学しにくかったりもします。。。)


とはいっても、アファーマティブ・アクションが進み、日本よりは働く女性の多いアメリカでさえも、マネージャーやCEO、大学の学長といったトップの管理職では女性が少ないことで、問題になっています。


とくに 通称 STEM と呼ばれる、科学、技術、工学、数学(STEM: Sceience, Technology, Engineering, Mathmatics ) の分野では女性の進出が著しく低いのです。物理や工学科となると、女性の数は全体の12%以下。(まぁそれでも私が日本にいた当時は物理学科200人のうち、女子生徒は2,3人というのが普通だったので、それよりはましですが。)


STEM分野でなぜ女性が少ないのでしょうか。
イェール大学の天体物理学者、Meg Urry 教授がこれを議題に、今年2月シカゴ大学で行った講演があります。タイトルはずばり Why so few?

ビデオはこちらでみることができます。
素晴らしい講演なので、興味のある方は是非チェックしてみてください。



Meg Urry教授はアメリカ国立科学財団(National Science Foundation)でも長年、女性の地位向上のため頑張っていらっしゃいます。

CNNによるUrry教授のインタビュー記事はこちら。

よくまとめられたいい記事だと思うので、興味のある方はこちらも是非お読みください。

この記事の中で、私が最も大事だと思っている一文。

Perhaps the biggest worry is that people who swear they are objective are the most likely to make biased judgments.  
最も懸念すべきことは、自分は 客観主義 だと思っている人のほうが、偏見に満ちた判断を下してしまうことである。

そうなんです。

自分は差別なんかしていない!
偏見なんてもってのほか! 

と言い張る人ほどこそ、実はかなり偏見に満ちた見解を、知らず知らずのうちに持っていることが多々あるのです。これは様々な心理学テストで実証されています。

けれど人間が社会生活を営むうえで、何かしらの ステレオタイプや偏見 を持ってしまうことはある意味、仕方がないことだと思うのです。

大事なのは、自分に常に問いかけること。自分を客観的にみる努力をすること。

そのためには本を読んだり、多くの人と会ったり、一番いいのは時々環境を変えてみることだと個人的には思っています。特に海外に住むと、それまで自分が当然としていた 価値観・認識・見解 が、実は自分や自分が生まれ育った文化特有の物で、他の人は自分と全く違う考えや価値観を持っていることを知り、愕然とすることが結構あります。

この 価値観の違いーーDiversity 多様性ーー を尊重することが、グローバル社会で生き残っていくための秘訣だと個人的には思っています。


ここまで読むと、みなさん
  
   自分は無意識のうちにどれだけ差別、偏見をしているのだろう?

とちょっと疑問がわいてくると思います。

そんな方はハーバード大学で開発されたテスト、潜在的連合試験(Implicit Association Test) を是非お受けください。様々なカテゴリーでの個人の自動的選好 の度合いを測ることができます。



たとえば、自動的選好の例として

・ 太った人よりも痩せた人を自然に好む。
・ 黒人よりも白人にたいして、無意識に好意を抱く。
・ 人文学は女性のもの、科学は男性のもの、と無意識のうちに結びつける。

などが挙げられます。

こちらがサイトのトップの画面です。
日の丸をクリックすれば、日本語でもテストを受けることができます。

こちらがトップの画面。
日本語でテストを受ける場合は、日本の国旗をクリック。
調査の趣向に同意するか否かのページが出てきますので、そこで はい と答えれば、次にカテゴリーを選ぶ画面が出てきます。



知り合いに黒人の天文学者がいるのですが、彼は 自分は無意識のうちに、黒人にたいして偏見を持っていた ことをこのテストで知り、愕然としていました。


私もやってみました。ジェンダーと科学です。

こちらが私の結果。





ズームインしてみましょう。



Your data suggest a slight association of Female with Science and Male with Liberal Arts compared to Male with Science and Female with Liberal Arts.

どうやら私は、科学=女性 、人文学=男性 と結びつけてしまう傾向にあるようです(爆)。

  女だって科学できるんだぞーーーー!

と思いながら、鼻息あらく テストを受けたからでしょうか。。。
(リラックスして受けるというテストの趣旨に反しているし。。)

それともテストを受ける前夜に、スーパー超出来る女性科学者(博士課程終了後、有名大学で即座に助教授になった)に会って、彼女に感化された からでしょうか。

または母国語ではない、英語でテストを受けたので 無意識のテスト とならなかったからでしょうか。

今度はリラックスした気持ちで、日本語でテストを受けようと思います。
皆さんも是非お試しください。



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5 件のコメント:

  1. コミュからきました。みこりんです。
    とてもロジカルで説得力がありますね。男女共同参画は、理念で進めようとする方も多いのですが、目指すは政策、それも○年後の姿だと思います。ありがとうございました。

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  2. 同じくコミュからきました~♪ RISAです。
    解り易く説得力のある文章でとても興味深く読ませていただきました。
    テストは夜ひっそりと(笑)受けてみます。
    今回のサポメに感化されコミュでは熱く語って(書いて)しまいました。
    アファーマティブ・アクションやクォータ制 日本では難しいのでしょうか?
    でも逆差別と言われそうだし・・・。
    性別関係なく、個人が出来ることをそれぞれ提供できるということで良し!
    にはならないんでしょうかね? 理想論かな。 

    返信削除
  3. みこりんさん、
      コメントありがとうございます。
      そうですね、理念や精神論だけで進もうとすると、どうしても頓挫してしましますね。
      そう、まるで私の 「今年の抱負」 のように!(爆) 例年、計画倒れしてますからねー。

      個人個人の意識を急に変えるのは難しいかもしれないけど、政策やシステムを変えれば、
      次第に人々の考えも変わるんじゃないかなぁ、と思っています。


    RISAさん、 
      数年前に、確か九州大学の数学科が女子学生を入試で優遇する方針を発表したとき、猛烈な反対がありましたよね。  そして結局この方針は見送られてしまいました。

      私、実は日本にいたときは、男女ともに同じ試験を受け、対等に評価されればいいじゃないか!
      と思っていました。女性優遇は 甘え だとさえ思っていました。

      でも今はアファーマティブ・アクション賛成派です。
      
      なぜならアファーマティブ・アクションによって、グループ、ひいては社会にに多様性が生まれ、
      結果として生産性が上がるからです。このことはMeg Urry 教授もトークで話されていました。
      
      本当に、性別や人種に関係なく、個人個人が自分の強みを活かせる社会になると素晴らしいですよね。
      日本の男性が背負っているもの(一家の大黒柱にならなければいけないプレッシャーとか)って大きすぎて、
      大変じゃないかなぁとおもいます。
      
      コメントどうもありがとうございました。

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  4. こんにちは!
    もうご存知だろうとは思ったのですが、念のためお知らせしておこうと思いました。
    昨日、ハーバードで試写された宇宙飛行士さんらのノンフィクション映画です。

    こちらでご覧になれます ↓
    https://vimeo.com/channels/staffpicks/55073825

    では素敵な週末を☆

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  5. ゆきさん
     おお、そんな映画があったのですね! 知りませんでした(無知)。
     今リンク先をみたのですが、宇宙から見る地球の映像が綺麗ですね。
     さっそく見てみます。ありがとうございました! 

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